2013年07月

まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(4)

(1)(2)(3)から続く

Sq.8 修羅場:まきりんぱな

 さあ修羅場。これまで見てきた第4話の論理を駆使すれば、このシークエンスの映像はほとんど合理的に導くことができる。まず一、登場人物。Sq.3とSq.5では、ともに直前のシーンで顔見せしていた凛と真姫が花陽に絡んできた。この場面の直前=Sq.7では、音読に失敗した花陽を、真姫と凛が心配そうに見つめている。よってここで、ついに(必然的に)まきりんぱな3人が画面上に揃うことになる二、展開。花陽はことりの言葉:「やりたいならやってみる」を胸に声を出してみたが失敗した。この失敗に落ち込んだらしく、彼女は中庭(?)の樹の下でひとり座っている。Sq.3とSq.5で描かれたとおり、座っている花陽は誰かに絡まれなければならない。最初にやってくるのは真姫だ。三、話の内容と情報のズレ。真姫は花陽の問題点を「スキル不足」に見ていた。だからこそ彼女が花陽にかける言葉は「あなた、声はきれいなんだから、あとはちゃんと大きな声を出す練習すればいいだけでしょ」。花陽に自身を取り戻させるべく、真姫は強引に発声練習に巻き込む。

 そこに凛がやってくる。左から画面に侵入してきた凛は「かよちーん」と、まず遠くにいる花陽に呼びかける。あと数歩の距離まで近づいて、花陽との間にいる人物を初めて気にする:「西木野さん!?どうしてここに?」。「ここ」とは「花陽のいる場所」だ。凛は花陽と真姫が一緒にいることを意外に思っている。凛は花陽と真姫が実家を訪ねる仲(?)になったことを知らないのだ。さて凛は花陽の問題を「決断力不足」に見ていたのであり、自分が彼女を屋上に連れて行くべく、花陽の手を引いて「それより、今日こそ先輩のところに行って、アイドルになりますって言わなきゃ!」。真姫が「そんな急かさないほうがいいわ。もう少し自信をつけてからでも」と口を挟むと、「なんで西木野さんが凛とかよちんの話に入ってくるの!?」。凛にとっては、花陽の事情は自分しか知らないはずの情報(共有された記憶)だから、これはまさに「凛とかよちんの話」でしかない。

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真姫と凛に絡まれることも、二人が言い争いになって花陽を引っ張り合うことも、それが意味するものも、第4話の論理で合理的に導ける。

 そして四、動作。凛は花陽を穂乃果たちの待つ屋上へ連れて行こうとする。これは一刻も早く花陽を屋上に連れて行きたい凛としては妥当な行動だが、ここで花陽を引っ張ろうとする動きに、Sq.3で見た「関係性から物理運動への変換」が発生する。いっぽう真姫は「もう少し自信をつけてから」と言っていたのだから、自分が花陽を連れて行く必要は全くない。しかしここで花陽を引っ張る行為は、彼女を屋上へ連れて行くだけでなく、花陽の問題点が「スキル不足」なのか「決断力不足」なのかを決定する運動でもある。そのために真姫は「どうしてもって言うなら私が連れて行くわ!」と、真姫にとっては不本意な行動をとらざるを得なくなるのだ。見ての通り、これは花陽の理解度をめぐる修羅場であり、つまり彼女がアイドルを拒む2つの問題を克服させようとする動きである。

 最後に、五、結果。この”修羅場プログラム”が実行された結果、まきりんぱな3人はようやく屋上に到達する。花陽を屋上まで運んでいくのは相当大変だったのだろう、花陽が「誰か助けてー」と叫んだ次のカットではいきなり夕方になっていて、これが入部の決意を語るシーンにクサい照明効果を付加しているのだが、ここで見たいのは照明的な演出ではなく上昇スピードの力学だ。2人の牽引力をもってしても、屋上にたどり着くまでには、すっかり夕方になってしまっていた。Sq.3で凛が同じこと=花陽を掴んで連れて行こうと試みながら失敗した事実を加味すれば、花陽を屋上まで運ぶためには高1女子2人分の仕事量が必要であることがわかってくる。花陽ひとりでは動けず、花陽と凛では牽引力が足りず、凛と真姫は花陽を引っ張ることしかできない。これが第4話世界の物理法則だ。つまりこの条件下では、一年組は3人揃わなければ絶対に屋上に行けないのだ。

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花陽は凛ひとりでは運べず、真姫と二人でなら運べるが、かなり時間がかかる、という物理法則。まきりんぱなは3人揃わなければ屋上に行けない。

 屋上に到着してからも、真姫と凛は未だに花陽の理解度で争っているが(「かよちんはずっと前からアイドルやりたいと思ってたんです」の凛に「そんなことはどうでもよくて」と言ってしまう真姫。真姫にとっては、それは本当にどうでもいいことなのだ)、まだ決心がつかない花陽に対して、ついに凛が決定的な一言を放つ:「いつまで迷ってるの?絶対やった方がいいの」、それに対して真姫は「それには賛成、やってみたい気持ちがあるならやってみたほうがいいわ」。ここに来てついに、問題は「やりたいならやるべき」というところまで還元された。この点で真姫と凛が一致したことで、二人が争っていた花陽の問題点=「スキル不足」と「決断力不足」は背景に遠のき、「やってみたい気持ち」に取って代わられた。そして二人が見た花陽の問題がどうでもよくなった瞬間、この還元はまきりん自身に反射し、二人が抱えていた「未来」と「過去」の事情も、「やってみたい気持ち」を前にして、取るに足らない瑣末な問題に貶されたのだ。だから真姫と凛が加入したことも決して唐突な展開ではない。以上の手続きを全て踏むことで、ようやくめでたく、まきりんぱなの3人は、μ'sに加入できたわけだ。

 第4話は、1話のうちに一年組3人を加入させるという物語の要請を、3人の関係性を物理法則に変換し、システマチックに映像を構成することで処理している。花陽はふたりの思いを反射する鏡であり、花陽を引っ張ろうとする力が、結果的に一年組3人の推進力となっていた。いわば花陽はマイナス穂乃果的な存在であり、最終的には物理運動=屋上への移動と、問題の克服=μ'sへの加入までもが、けっきょく一年組3人の運動として成し遂げられた。このシステマチックさは必ずしも作品の評価に繋がるものではないが(安易な役の割り当てはむしろ「つまらなさ」の根拠になりうる)、ここまでガチガチに情報を圧縮した職人芸が見られるのも「ラブライブ!」の魅力のひとつであるし、最後にこのブログの文脈に引き付けて言えば、第4話がこのシステマチックさを実現するために穂乃果を画面から消去しなければならなかった事実が、逆に物語の構成を打ち壊していく穂乃果の主人公性を浮き彫りにするのである。まきりんぱな3人の加入は、穂乃果の営業スキルではなく、穂乃果の不在によってこそ成し遂げられたのだから。

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最後の最後に、組織的な構成に対する作品からの介入がある。花陽がメガネを取ることと、真姫の「メガネ取ったついでに名前で呼んでよ」(意味不明)は、第4話の論理で導くことは困難である(ここは第3話のアバンで、同じ場所で穂乃果に大声で名前を呼ばれたことを受けている。花陽のメガネはこの真姫デレを呼び込むために外されたのだろう)。最後に作者を参照しておくと、脚本の花田十輝によれば、これは京極監督のアイデアだったとのこと(twitter)。

(参考)ラブライブ4話にみる「富野流」演出術 - まっつねのアニメとか作画とか
画面レベルのシステマチックさが堪能できる。

(→)空気を読みすぎた天気「ラブライブ!」第5話
(→)鬼の矢澤の入部試験<アイドルゲーム>「ラブライブ!」第5話
(←)今を愛せ「ラブライブ!」第3話
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まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(3)

(1)(2)から続く

Sq.6 和菓子屋穂むら:花陽+μ's

 西木野邸からの帰途、花陽は通りかかった和菓子屋=高坂邸で母親に土産を買っていこうと思い立つ。これは完全に花陽が自分から起こした行動である。この気まぐれが全てを変える。穂乃果の部屋に上がっていくことになった花陽は、なんやかんやの後、再びμ'sの3人から勧誘を受ける。「でも私、向いてないですから…」と断る花陽に対して、立ち上がったことりが珍しく主体的に長台詞をぶつ:「プロのアイドルなら、私たちはすぐに失格。でも、スクールアイドルなら、やりたいって気持ちを持って、自分たちの目標を持って、やってみることはできる!」

 これまで見てきたように、凛・真姫とのシーンでは、花陽は二人に「絡まれる」側だった。しかしSq.6では、花陽は自ら扉を三度開いて中の光景を目撃する。まず(1)入店時。和菓子屋穂むらの扉を開けると、「いらっしゃいませー」と声をかけてきたのは割烹着姿の穂乃果だ。当然これはSq.5の真姫に対応する。真姫は家業である医者を継ぐ「未来」を理由にアイドル活動を拒んだ。これには花陽も「いろいろあるんだなあ…」と同情を禁じ得ない様子だったが、しかしμ'sで活動中の穂乃果はすでに家業を手伝って労働しているのである。いかにも深刻そうだった真姫に対して、穂乃果に悲壮感は全くない。というか、穂乃果は未来のことなどおそらく何も考えていない。次に(2)妹の部屋。2階に上がった花陽は、間違って妹の部屋の扉を開ける。そこで妹は必死にバストアップを図っている。この必死さを前にすると、凛がアイドルを拒否した根拠:「女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いし」など、かなりどうでもよくなってくる。遺伝子=「過去」に決定された身体的な条件であっても、変えようとしてみることはできるのだ。髪なんて勝手に生えてくるではないか。最後に(3)ポーズを決める海未。花陽のような引っ込み思案の人間でも、やろうと思えばあれくらいできる。

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花陽は三度扉を開き、この光景を目撃する。3人が抱える問題は花陽→凛→真姫の順に示されてきたが、解決の可能性は真姫(穂乃果)→凛(妹)→花陽(海未)の順に逆走して提示され、Sq.7ではSq.1の教室に還ってくる。

 花陽が開けた扉の向こうで、まきりんぱな3人が抱えていた問題は、いとも簡単に粉砕されてしまった。家の事情も、身体的な特徴も、思い切りの弱さも、実は大した問題ではないのだ。ことりの言葉を借りれば「やりたいって気持ちを持って、自分たちの目標を持って、やってみることはできる」のである。だがこの言葉は、要するに「やりたいならやればいいじゃない」であり、これまで凛と真姫が言っていたことと大差はない。これだけで3人をμ's入りさせることができるほど事は単純ではない。なぜか。Sq.6では、花陽は自分から扉を開いて高坂邸内部の光景を目撃することになったのだが、まさに花陽が自分から行動を起こしたことによって、凛と真姫はこの光景を全く見ることができないからだ。凛と真姫の問題:「過去に決定された身体的特徴」と「家系に決定されている未来」が克服される可能性を花陽は見たが、当のふたりはそれを知らない。逆に、花陽のスペックに問題がないことを凛は知っているが花陽自身は知らず、彼女がやる気十分であることを真姫は知っているが当人は知らない。各人が抱える問題と解の知識は、互い違いにずれている。

 そして第4話の映像は、この「ずれ」を抱える3人を、μ'sの歌声によって結びつけるのである。伏線は張られている。花陽が来店したこの日に限って、穂乃果のPCは壊れている。花陽より後からやってきたことりが「穂乃果ちゃん、パソコン持ってきたよ」と呼びかけると、穂乃果「肝心なときに限って壊れちゃうんだ~」海未「それで、ありましたか、動画は?」ことり「まだ確かめてないけど、たぶんここに…」と展開し、ネットにアップされたライブ動画を、花陽も含めた4人で見る流れになる。だがこの会話はおかしい。なぜことりは「まだ確かめてない」のに、動画が「たぶんここに」アップされていると考えたのか? ことり本人が「誰が撮ってくれたのかしら…」と漏らしたように(ずいぶん暢気な感想だがこれは盗撮だ)、そもそも撮影されたこと自体が想定外であるのだから、劇中世界でいかにメジャーな”スクールアイドル動画投稿サイト”があったとしても、あのライブの動画が投稿されていることを予想することは不可能である。これはSq.4(理事長室)で理事長が絵里に動画を見せた事実を以って、ことりが理事長=母親から情報を聞いたのだと考えてみよう。自分たちのライブ映像がネットに上がっているとなれば、当人たちとしては当然それを確認したいはずだ。だが「肝心なときに限って」穂乃果のパソコンは壊れている。誰かがPCを持ってこなくてはならない。穂乃果は店番をしなくてはならない。こうして海未が部屋に一人で残る条件が整い、花陽は彼女がポーズを決める姿を見ることができるようになる。

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穂乃果の部屋→真姫の部屋→凛の部屋→花陽の部屋(順番に注意)と、劇中の音声とBGMを重ねながら展開する演出は見事。

 ことりがPCを持ってきて、穂乃果たちは初めてライブ映像を確認できた。穂乃果のPCが壊れていたことで、花陽は初見の現場に居合わせることができたのだ。盛り上がるメンバー3人と、じーっと映像を覗きこむ花陽。ここで最初に書いたことりの勧誘台詞が入るが、このとき花陽が熱心に覗きこんでいるファーストライブは、そのまま劇中映像から劇伴に移行している。ファーストライブをBGMに、その映像を見て沈む真姫、女子っぽい服を着てみる凛と、アイドルになりきったかつての自分の写真を見る花陽。真姫の部屋でも、凛の部屋でも、光を放つPCのディスプレイが映っていた。この小道具が3人のずれを統合する。確かに、高坂邸内部の光景を目撃したのは花陽だけであった。しかしまきりんぱな3人は、同時にネットにアップされたμ'sの動画を見ていたのだ(歌声と劇伴を重ねる=曖昧にすることで浮遊感を醸しつつ映像に連続性を与える手法は、第1話第2話のラストにも見られた。第2話では歌声が時間と空間を接続する役割を果たしたが、第4話では明らかに断絶した空間を映像として強引に連続させることで、逆に3人を繋ぐものが「μ'sの歌声」以外ないことが示唆されている)。3人が共有できるおそらく唯一の記憶であるμ'sの歌声が3人を結びつけ、場面は翌日へ移行する。

Sq.7 音読失敗2:まきりんぱな

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 花陽はがんばって声を出してみるが、再び音読に失敗する。その姿を心配そうに見つめる凛と真姫。Sq.1では、回想と視線でしかなかった彼女たちが、ついに同時に画面に現れた。役者は揃った。

(もう一回続く

まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(2)

(1)から続く

Sq.5 西木野邸:まきぱな
 花陽はμ'sのポスターの前で真姫の生徒手帳を拾い、それを返すために西木野邸に向かう。この展開は安易というか雑にも見えるが、訪ねた先で真姫が不在だったことはポイントだ。この時間差があることで、舞台が西木野邸なのにもかかわらず、座っている花陽を真姫が訪ねる恰好になっている。先の凛との場面では、凛が座っている花陽に自分から絡んできた。これはSq.2の最後で、凛が花陽に呼びかけて場面を転換させたことを受けている。それに対してこの場面では、立ち去る真姫を見かけたSq.3を受けて、花陽はそれを追いかけるように西木野邸に向かっている。なぜか。花陽のほうから追いかけないと、真姫と絡むことができないからだ。Sq.1の視線が示すように、真姫は花陽に関心を抱いてはいる。しかし凛のように自分からは話しかけない。花陽と真姫をコンタクトさせ、真姫に「自分語り」をさせるためには、花陽みずからが西木野邸に移動する必要がある。そして、みずから移動したのにもかかわらず、真姫が後から登場することで、「受け役」としての花陽の実績は継続されているのだ。

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自分から真姫の家を訪ねたのにもかかわらず、ここでも花陽は「絡まれ役」。アイドルへの誘いも、真姫お得意の「それより」でカウンターされてしまう。

 まず花陽は真姫にスクールアイドルを勧める。「私、放課後いつも音楽室のそばに行ってたの。西木野さんの歌、聴きたくて」。この言葉が示すように、誘いの根拠は「真姫の歌が上手いから」、つまりスペックの問題である。それに対する真姫の返答は以下:「私ね、大学は医学部って決まってるの。だから、私の音楽はもう終わってるってわけ」。医者の家業を継ぐという「未来」を根拠に、花陽の誘いを退ける。もちろんこれは「過去」を根拠にした凛とセットになっていて、「過去」と「未来」の縛りをいかに解くかという、作品全体の主題のひとつ(例えば、第3話)ともかかわってくるし、さっそく次のシークエンスで再び問題になるところだ。花陽の前で、凛は「過去」、真姫は「未来」を根拠に、アイドル参加を拒んでいる。

 花陽の誘いを退けた真姫は、考えに耽るような顔アップのカットをきっかけに反転攻勢に出る(ここのカメラワークが良い)。「それよりあなた、アイドルやりたいんでしょ?この前のライブの時、夢中で見てたじゃない」。今度は真姫が花陽にアイドルを勧める。その根拠は「ライブを夢中で見ていた」から。つまりパッションの問題である。あんなライブを夢中で見ていたくらいだから、それはもうアイドルをやりたくて仕方がないはずだと。真姫は凛のように花陽と記憶を共有しているわけではないし、Sq.3までの流れも知らないから、真姫にとって花陽は「ライブを見に来るほどアイドルに興味があるが、音読に失敗するほど声を出すのが苦手なひと」である。真姫的には、花陽の問題は「自分から決断できないこと」ではなく「スペック不足」なのだ。だがそれは決定されている未来と違い、練習で克服できる問題である。だから真姫は、パッション重視で花陽に加入を勧めるのである:「やりたいならやればいいじゃない」

 もう一度まとめておこう。花陽は凛と真姫に絡まれ、アイドル加入を互いに勧める。凛は花陽の問題を「決断力不足」に見る。スペックは十分だから、あとはパッションの問題なのだと。しかし自身は「過去」を根拠にアイドル加入を拒む。それに対し、真姫は花陽の問題を「スペック不足」に見る。やる気は十分なのだから、あとはスキルの問題なのだと。しかし自身は「未来」を根拠に加入を拒む。まきりんぱな3人それぞれが抱える課題を明かしたところで、Aパートが終わる。これをどう解決するか。

続く

まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(1)

 第4話は、おそらく作中で最も構成的な回である。例によってお話は単純だ。憧れのアイドルへの一歩が踏み出せない花陽と、彼女に入部を薦める凛と真姫。花陽はふたりの思いを反射する鏡であり、花陽を引っ張ろうとする力が、結果的に一年組3人の推進力となる(これは強烈な光で周囲を照らし、自ら二年組を牽引する穂乃果とは対照をなす)。最後、まきりんぱなの3人は、めでたくμ'sに加入できていたが、では第4話は「1話のうちに一年組3人を加入させる」という構成上の要請を、いかにして処理したのか。

Sq.1 音読失敗1:(まきりん)ぱな
 花陽はμ'sのチラシを見ながら迷っている。花陽の気持ちは、随分と昔の回想の中で、凛の口から明かされる:「凛知ってるよ、かよちんはアイドルになりたいんだよね」。大昔の(10年近く前だ)、しかも他人の言葉という、かなり変な情報である。花陽はなぜこの場面を回想したのか? この疑問は正当だがひとまず措く。ここで注目したいのは、先生に「そこまで」と言われ、落ち込んで座り込む花陽を捉えたカット。本編1カット目で明らかになっている席配置を参照すれば、このカットは真姫の視線であると推定できる。作中ここまで花陽と真姫の絡みは全くないが、第3話のライブに居た彼女の姿を見て気にかけていたのだろう(後のセリフ:「この前のライブの時、夢中で見てたじゃない」)。アバンでは、回想と視点のかたちで、今回の主要な登場人物である凛と真姫が、すでに気配を漂わせている。

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回想と視点のかたちで、凛と真姫はすでに画面に現れている。

Sq.2 アルパカ:(りん)ぱな+μ's
 OP開けはアルパカとことり。アルパカが暴れかけたところで、花陽が堂々たる歩みで画面に入ってくる。OPでは例によって穂乃果がどセンターで笑顔を振りまいていて、これは強烈に印象に残るので、花陽の物語を開始するためには、穂乃果たちには一旦退場してもらわなければならない。羊的な容貌のアルパカ(分類上はラクダ科らしい)は、これまで主人公だった3人を「一回休み」状態にするための小道具だ。この主人公交代の儀式は凛の声掛けによって終わる:「早くしないと体育遅れちゃうよ」。そう、凛は急いでいるのだ。

Sq.3 放課後:(まき)りんぱな
 前のシーンが顔見せの役割を果たし、放課後、花陽に凛が絡んでくる。ここで拾っておきたい要素は5つ。まず(1)凛は座っている花陽に絡んでくる。顔のアップが印象的な「スクールアイドルやろうと思ってたり?」のカットでは、凛も座って花陽と目線を合わせてくる。この位置関係。次に(2)凛は急いでいる:「早くしないと、みんな部活始めてるよ」。だが「凛は陸上部かなー」との言葉は、彼女もまだ部活に入っていないことを示している。第3話から陸上部に興味を持っていたことを考えれば、決断力の無さという点においては花陽と同レベルである。これは決して凛が花陽を「引っ張る」お話ではないのだ。それを示すかのように(3)凛は花陽を物理的に「引っ張って」穂乃果たちのところへ連れて行こうとするが、これも印象的な足元のカットで阻止される。関係性から物理運動への変換。

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ともに印象的なカット。この位置関係と、関係性から物理運動への変換。

 さらに、(4)凛の回想。花陽の誘いに対して、「凛はアイドルなんて似合わないよ。女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いし」と、容姿や身体的な条件を理由にしてから、スカートを男子にバカにされた回想が入る。当然ここでは、先の花陽の回想と同じ疑問を持たねばなるまい:なぜよりによってこの場面なのか? 2つの回想の年代と服装の一致を「設定がこれしかなかったから」という制作的な理由で回収するのはつまらない。ので、ここでは「2つの回想が同じ日の出来事だった」と考えてみる。ある日のこと、凛はスカートを穿いて登校し、それを花陽に「かわいいよ」と褒められた。しかし男子にバカにされたと思い、着替えて学校に行った。学校での会話の中で、花陽が「何になりたいか」と尋ねられたところに、凛が「かよちんはアイドルになりたいんだよね」と口を出した。二人ともこの日の出来事をよく覚えていて、「アイドルをやるか否か」と考えた時に想起した。これらの事実から、これは二人が初めて「アイドルをやってみたい」と自覚した記憶だったと考えることができる。花陽は凛に代弁されたことで、その気持ちとともに「自分からは言い出せなかった」という事実を。凛は花陽の願いとして口にしたことで、登校時の出来事と併せて「自分には不相応な願いだ」という記憶を残した。2つの回想は、花陽と凛がアイドルをやってみたい理由であると同時に、それができない理由として共有されている記憶だったのだ。

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2つの回想の年代と服装は一致している。

 このシークエンスは、(5)真姫の登場によって終わる。これは前のシークエンスと同じく、次の展開を呼び込む準備である。しかしまきりんぱなの3人は、まだ画面上に揃わない。

続く

(←)今を愛せ「ラブライブ!」第3話
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