2015年01月

「聖剣使いの禁呪詠唱」(第1話)

 最初から面白い。一言目から「思い……出した……」と言われても困るし、その思い出した記憶(なぜか女が酷い目に遭っている)も唐突でニヤつく。こういう場面でありがちな女声ボーカルがいい味を出している。戦闘が始まる。剣と魔法で闘う主人公。「ウィーアーザセイバーズ」でいよいよオカシイと思う。「綴る!」で左腕を振り上げる。怪獣四歩、曲の盛り上がりを待つ1カットの溜めが良い。

 呪文を綴り始める。綴り→怪獣の火炎放射→綴り→着弾の早い切り替えが良い。怪獣が火を噴こうとも、この男は綴り続ける。綴りの行数が増えていく。だがそれにもお構いなしに、男(イギリス本部?)が攻撃。アクションを切断するように静止したまま高速で綴り続ける主人公がしつこい。仲間の攻撃の描写がバラバラしていて、連携して主人公を守ろうとする戦術はあまり感じない。真面目に綴り続ける主人公は放置されているのだ。いや放置されているのは怪獣と仲間のアクションのほうか? 互いに無関心のまま続く戦闘。距離感のある映像の冷たさが面白い。

「果てよ、果てよ、果てよ、果てよ」、この辺でそろそろいい加減にしろと思えてくるが、絶妙なタイミングで音楽が2ループ目に入る。まだ続きます。ここで主人公以外の呪文系女が登場、即座に呪文を発動させて、剣系の女との連携攻撃。凍って斜面を滑り落ちてくる怪獣。吹っ飛ばされるバス停がシュールだ。なぜバス停? 「この軽きを この躍動を この自由を この幸福を すべてのものに分け与えよ」もはや何を綴っているのか。「サンダーストームヘリックス」の語感はまあまあだが(作品は違うが「レッツサーチイーブル!」には洗練を感じる)、そのあとの「みんな、ありがとう」がたまらなくおかしい。冷たい映像とのコントラスト。ここまでやられると幼女の語りは何も頭に入ってこない。そのこと自体がさらにおかしみを増す。



 主人公の綴りが面白いのは、(1)まわりで激しい=速いアクションをやっているあいだ、ずっと静止して綴り続けているから。まずこの緩急。だが綴り自体の速度は速い。驚異的なスペリングだ。つまり(2)動き自体は速いのに、えらく時間のかかる遅さをもっている。これを際立たせるために静乃の綴りはカットされ、彼女の呪文は即座に発動する。声の呪文詠唱だけだったらきっと面白くないだろう。実際に綴っているから、その動きが作る時間が面白い。

 さらに、(3)呪文の根拠が情報の意味から量に変わること。まず唱えながら綴るという行為が、呪文を音声と文字に分裂=増殖させる。しかし、声はゴニョゴニョしているし、文字もゴチャゴチャしているので、内容が分からない。いや、文字はよく見ると平仮名なので「読める」のだが(この間抜けさも良い)、平仮名は表音だし、かなり達筆に崩してあるのでパッと見では意味が取れない。なんとか読めるけど分からない。そこに映像レベルで書き下しの字幕が入る。更なる増殖で呪文の情報量は極大化する。これで意味が分かる、しかし(呪文なので当たり前と言えば当たり前だが)分かったところで意味を成さない。呪文の分裂=増殖を重ね、情報量を極大化したことで逆に増幅される徹底した無意味さ! 説得力をもって語られたことはただ一点、主人公が綴る量がすごく多いこと。たっぷり時間もかけている。あんだけ綴ればそりゃ強いでしょう。ということで、この映像が、どんな設定説明よりも効果的な「強さ」の根拠になる。みんなありがとう!

 原作はラノベ。意味ではなく情報量が呪文のスペックを決める(行数がそのままレベル表記になる)のは同じだが、当然、呪文は文章で1回書かれているだけ。スペリングも、詠唱と同時に素早く綴ったとあるのみで、綴りの動きが生む速さと遅さを感じることはできない。多重の情報で無意味を増幅させる贅沢な面白さは映像でしか味わえない。他にも、居眠りで説明ゼリフを見事に上滑りさせたり(設定なんて全然頭に入ってこない)、出会いのシーンで突然涙を流すサツキと倒れる静乃の異常な速さ、ポテトシーンの高速首振りからのクロスフェードなど、見どころ多数。見事な映像化。
聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> (GA文庫)聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> (GA文庫)
(2013/02/14)
あわむら 赤光

商品詳細を見る

 監督は稲垣隆行。原作との相性は「のうコメ」以上か?
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。