PVとしての「ラブライブ!」第6話

「ラブライブ!」第6話は、最後に楽曲パートが入った。1話、3話に続いて3回目だが、映像中の扱いはそれぞれ違う。1話はミュージカル、3話はライブ、6話はPVだ。1話と3話は単純にそうとは言い切れないが(特に1話)、6話の楽曲パートがPVなのは確実である。最後のシーン、会長はすでにPVとしてアップされた映像をネットで見ていた。ではどこからがPVだったか?

 どこからPVだったのか? 映像がPVだとわかった瞬間に、第6話はこの疑問をもとに再解釈されはじめる。すると、いやそれは当然曲が流れて衣装を着た穂乃果が映るカットから……と単純には言い切れないことにすぐに気づく。ひとつ前のカットを見ると、ひとりでに扉が開き、光で満たされた劇空間にカメラが入っていく。これはいかにもPV的だ。ではもうひとつ前、穂乃果が「じゃあ、始めよう!」と宣言するカットは? このカットが鍵になる。少し前から見てみよう。

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 階段を駆け上り、練習場所の屋上に向かう穂乃果。セリフを割り当てられた他の部員は、穂乃果より後ろを歩いている。彼女らの視点に立つカメラは、階段を上る穂乃果の姿を見上げるようにして捉える。さて問題のカット。穂乃果は階段を上りきったところで後ろを振り向き、「じゃあ、始めよう!」。これ、後ろを歩く部員に向かって、練習開始を告げているようにも見えるが、しかしそう考えるといろいろとおかしいのである。まず、(1)穂乃果は屋上に向かっているはずなのに、屋上のドアには背を向けて、反対側の壁を向いている。この構図は、屋上へ向かう自然な動作と言うよりは、ドアから差し込む光を捉える、いかにも撮影的な作為を感じさせる。そしてより決定的なことに、(2)部員たちが階段の下にいるはずなのに、穂乃果はまっすぐこちらを見ている。穂乃果は階段を上りきって振り向いた。部員たちは彼女より遅れて階段を上っている。ということは、もし部員たちに向けた発言なら、彼女は階段の下を見おろさなければならないはずだ。だが穂乃果の目線は虚空のカメラを見つめている。つまり穂乃果は、部員たちに次の時間=練習の開始を告げているのではなく、カメラの向こうに、次の映像=楽曲の開始を宣言しているのだ。

 さてこのカットをPVだと考えると面白いことがおこる。このカットは前のカットから連続した劇伴という接着剤で繋がれていていた。ではその劇伴が流れ始めるのはどこか? これはシーンひとつ前、部室で穂乃果が「(リーダーとかいなくても)いいんじゃないかな」と言うところだ。そしてここまで遡ると、もう明確に切れるところがない。PVの開始点は確定されないままどんどん遡っていく。それどころか、描かれている内容が、ことごとく最後の楽曲パートに収斂していくことが明らかになってくるのである。屋上で練習していた振付は実際に使われているし、みんながソロで歌うことも楽曲で実現している。お話を通して実質的なリーダーであることが強調された穂乃果は、センターは固定しないという体の楽曲の中でも、ちゃっかりどセンターを確保している。つまり第6話全体が、楽曲が成立するプロセスをドラマ仕立てで見ることができる、メイキングドキュメンタリー風のPVに見えてくる

 こうしてPVは最初のカットまで遡る。第6話の1カット目に描かれていたのは、真正面からレンズに映り込んだ穂乃果の姿だった。そのカメラを回しているのは、メンバーの凛だ。キャラクター自らがカメラを回すといういかにもメタな行動は、生徒会がメンバーにカメラを貸す条件としての取材、という設定である。これは副会長の「そしたらPVとか撮れるやろ?」というサジェストから導かれていた。つまり第6話の映像は、最初の1カット目から、映像的にも物語的にも、PVを構成するという目的に貫かれていたわけだ。

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 これは同じく楽曲パートが挿入された第1話とは全く違っている。第1話が穂乃果の能動的な動きを原理として構築されていたのに対して、第6話の映像は、全てが最後の楽曲パートに収斂する。逆に言えば、最後の楽曲パートを引き立てるために、全ての映像が並べられている。しかしこれは物語に引っ張られた結論ありきのショボイ映像を意味しない。なぜなら第6話は全体がPVに見えるように設計されていて、そもそもPVとは楽曲を引き立てることを原理にする映像であり、そしてこの構造が明らかになる鍵は、先に取りあげた終盤の1カットにあるからだ。「ラブライブ!」は、話数ごとに、映像の原理をいじってくる作品なのだ。

(追記)ここの二段仕掛けもよかった。

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作品内にカメラをぶち込んだからには、撮影者あるいはフレーム外から仕掛けるのは必然。

(=)二重否定のセンター高坂「ラブライブ!」第6話
(←)鬼の矢澤の入部試験<アイドルゲーム>「ラブライブ!」第5話
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