まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(1)

 第4話は、おそらく作中で最も構成的な回である。例によってお話は単純だ。憧れのアイドルへの一歩が踏み出せない花陽と、彼女に入部を薦める凛と真姫。花陽はふたりの思いを反射する鏡であり、花陽を引っ張ろうとする力が、結果的に一年組3人の推進力となる(これは強烈な光で周囲を照らし、自ら二年組を牽引する穂乃果とは対照をなす)。最後、まきりんぱなの3人は、めでたくμ'sに加入できていたが、では第4話は「1話のうちに一年組3人を加入させる」という構成上の要請を、いかにして処理したのか。

Sq.1 音読失敗1:(まきりん)ぱな
 花陽はμ'sのチラシを見ながら迷っている。花陽の気持ちは、随分と昔の回想の中で、凛の口から明かされる:「凛知ってるよ、かよちんはアイドルになりたいんだよね」。大昔の(10年近く前だ)、しかも他人の言葉という、かなり変な情報である。花陽はなぜこの場面を回想したのか? この疑問は正当だがひとまず措く。ここで注目したいのは、先生に「そこまで」と言われ、落ち込んで座り込む花陽を捉えたカット。本編1カット目で明らかになっている席配置を参照すれば、このカットは真姫の視線であると推定できる。作中ここまで花陽と真姫の絡みは全くないが、第3話のライブに居た彼女の姿を見て気にかけていたのだろう(後のセリフ:「この前のライブの時、夢中で見てたじゃない」)。アバンでは、回想と視点のかたちで、今回の主要な登場人物である凛と真姫が、すでに気配を漂わせている。

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回想と視点のかたちで、凛と真姫はすでに画面に現れている。

Sq.2 アルパカ:(りん)ぱな+μ's
 OP開けはアルパカとことり。アルパカが暴れかけたところで、花陽が堂々たる歩みで画面に入ってくる。OPでは例によって穂乃果がどセンターで笑顔を振りまいていて、これは強烈に印象に残るので、花陽の物語を開始するためには、穂乃果たちには一旦退場してもらわなければならない。羊的な容貌のアルパカ(分類上はラクダ科らしい)は、これまで主人公だった3人を「一回休み」状態にするための小道具だ。この主人公交代の儀式は凛の声掛けによって終わる:「早くしないと体育遅れちゃうよ」。そう、凛は急いでいるのだ。

Sq.3 放課後:(まき)りんぱな
 前のシーンが顔見せの役割を果たし、放課後、花陽に凛が絡んでくる。ここで拾っておきたい要素は5つ。まず(1)凛は座っている花陽に絡んでくる。顔のアップが印象的な「スクールアイドルやろうと思ってたり?」のカットでは、凛も座って花陽と目線を合わせてくる。この位置関係。次に(2)凛は急いでいる:「早くしないと、みんな部活始めてるよ」。だが「凛は陸上部かなー」との言葉は、彼女もまだ部活に入っていないことを示している。第3話から陸上部に興味を持っていたことを考えれば、決断力の無さという点においては花陽と同レベルである。これは決して凛が花陽を「引っ張る」お話ではないのだ。それを示すかのように(3)凛は花陽を物理的に「引っ張って」穂乃果たちのところへ連れて行こうとするが、これも印象的な足元のカットで阻止される。関係性から物理運動への変換。

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ともに印象的なカット。この位置関係と、関係性から物理運動への変換。

 さらに、(4)凛の回想。花陽の誘いに対して、「凛はアイドルなんて似合わないよ。女の子っぽくないし、髪だってこんなに短いし」と、容姿や身体的な条件を理由にしてから、スカートを男子にバカにされた回想が入る。当然ここでは、先の花陽の回想と同じ疑問を持たねばなるまい:なぜよりによってこの場面なのか? 2つの回想の年代と服装の一致を「設定がこれしかなかったから」という制作的な理由で回収するのはつまらない。ので、ここでは「2つの回想が同じ日の出来事だった」と考えてみる。ある日のこと、凛はスカートを穿いて登校し、それを花陽に「かわいいよ」と褒められた。しかし男子にバカにされたと思い、着替えて学校に行った。学校での会話の中で、花陽が「何になりたいか」と尋ねられたところに、凛が「かよちんはアイドルになりたいんだよね」と口を出した。二人ともこの日の出来事をよく覚えていて、「アイドルをやるか否か」と考えた時に想起した。これらの事実から、これは二人が初めて「アイドルをやってみたい」と自覚した記憶だったと考えることができる。花陽は凛に代弁されたことで、その気持ちとともに「自分からは言い出せなかった」という事実を。凛は花陽の願いとして口にしたことで、登校時の出来事と併せて「自分には不相応な願いだ」という記憶を残した。2つの回想は、花陽と凛がアイドルをやってみたい理由であると同時に、それができない理由として共有されている記憶だったのだ。

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2つの回想の年代と服装は一致している。

 このシークエンスは、(5)真姫の登場によって終わる。これは前のシークエンスと同じく、次の展開を呼び込む準備である。しかしまきりんぱなの3人は、まだ画面上に揃わない。

続く

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