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まきりんぱなへ至る途「ラブライブ!」第4話(4)

(1)(2)(3)から続く

Sq.8 修羅場:まきりんぱな

 さあ修羅場。これまで見てきた第4話の論理を駆使すれば、このシークエンスの映像はほとんど合理的に導くことができる。まず一、登場人物。Sq.3とSq.5では、ともに直前のシーンで顔見せしていた凛と真姫が花陽に絡んできた。この場面の直前=Sq.7では、音読に失敗した花陽を、真姫と凛が心配そうに見つめている。よってここで、ついに(必然的に)まきりんぱな3人が画面上に揃うことになる二、展開。花陽はことりの言葉:「やりたいならやってみる」を胸に声を出してみたが失敗した。この失敗に落ち込んだらしく、彼女は中庭(?)の樹の下でひとり座っている。Sq.3とSq.5で描かれたとおり、座っている花陽は誰かに絡まれなければならない。最初にやってくるのは真姫だ。三、話の内容と情報のズレ。真姫は花陽の問題点を「スキル不足」に見ていた。だからこそ彼女が花陽にかける言葉は「あなた、声はきれいなんだから、あとはちゃんと大きな声を出す練習すればいいだけでしょ」。花陽に自身を取り戻させるべく、真姫は強引に発声練習に巻き込む。

 そこに凛がやってくる。左から画面に侵入してきた凛は「かよちーん」と、まず遠くにいる花陽に呼びかける。あと数歩の距離まで近づいて、花陽との間にいる人物を初めて気にする:「西木野さん!?どうしてここに?」。「ここ」とは「花陽のいる場所」だ。凛は花陽と真姫が一緒にいることを意外に思っている。凛は花陽と真姫が実家を訪ねる仲(?)になったことを知らないのだ。さて凛は花陽の問題を「決断力不足」に見ていたのであり、自分が彼女を屋上に連れて行くべく、花陽の手を引いて「それより、今日こそ先輩のところに行って、アイドルになりますって言わなきゃ!」。真姫が「そんな急かさないほうがいいわ。もう少し自信をつけてからでも」と口を挟むと、「なんで西木野さんが凛とかよちんの話に入ってくるの!?」。凛にとっては、花陽の事情は自分しか知らないはずの情報(共有された記憶)だから、これはまさに「凛とかよちんの話」でしかない。

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真姫と凛に絡まれることも、二人が言い争いになって花陽を引っ張り合うことも、それが意味するものも、第4話の論理で合理的に導ける。

 そして四、動作。凛は花陽を穂乃果たちの待つ屋上へ連れて行こうとする。これは一刻も早く花陽を屋上に連れて行きたい凛としては妥当な行動だが、ここで花陽を引っ張ろうとする動きに、Sq.3で見た「関係性から物理運動への変換」が発生する。いっぽう真姫は「もう少し自信をつけてから」と言っていたのだから、自分が花陽を連れて行く必要は全くない。しかしここで花陽を引っ張る行為は、彼女を屋上へ連れて行くだけでなく、花陽の問題点が「スキル不足」なのか「決断力不足」なのかを決定する運動でもある。そのために真姫は「どうしてもって言うなら私が連れて行くわ!」と、真姫にとっては不本意な行動をとらざるを得なくなるのだ。見ての通り、これは花陽の理解度をめぐる修羅場であり、つまり彼女がアイドルを拒む2つの問題を克服させようとする動きである。

 最後に、五、結果。この”修羅場プログラム”が実行された結果、まきりんぱな3人はようやく屋上に到達する。花陽を屋上まで運んでいくのは相当大変だったのだろう、花陽が「誰か助けてー」と叫んだ次のカットではいきなり夕方になっていて、これが入部の決意を語るシーンにクサい照明効果を付加しているのだが、ここで見たいのは照明的な演出ではなく上昇スピードの力学だ。2人の牽引力をもってしても、屋上にたどり着くまでには、すっかり夕方になってしまっていた。Sq.3で凛が同じこと=花陽を掴んで連れて行こうと試みながら失敗した事実を加味すれば、花陽を屋上まで運ぶためには高1女子2人分の仕事量が必要であることがわかってくる。花陽ひとりでは動けず、花陽と凛では牽引力が足りず、凛と真姫は花陽を引っ張ることしかできない。これが第4話世界の物理法則だ。つまりこの条件下では、一年組は3人揃わなければ絶対に屋上に行けないのだ。

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花陽は凛ひとりでは運べず、真姫と二人でなら運べるが、かなり時間がかかる、という物理法則。まきりんぱなは3人揃わなければ屋上に行けない。

 屋上に到着してからも、真姫と凛は未だに花陽の理解度で争っているが(「かよちんはずっと前からアイドルやりたいと思ってたんです」の凛に「そんなことはどうでもよくて」と言ってしまう真姫。真姫にとっては、それは本当にどうでもいいことなのだ)、まだ決心がつかない花陽に対して、ついに凛が決定的な一言を放つ:「いつまで迷ってるの?絶対やった方がいいの」、それに対して真姫は「それには賛成、やってみたい気持ちがあるならやってみたほうがいいわ」。ここに来てついに、問題は「やりたいならやるべき」というところまで還元された。この点で真姫と凛が一致したことで、二人が争っていた花陽の問題点=「スキル不足」と「決断力不足」は背景に遠のき、「やってみたい気持ち」に取って代わられた。そして二人が見た花陽の問題がどうでもよくなった瞬間、この還元はまきりん自身に反射し、二人が抱えていた「未来」と「過去」の事情も、「やってみたい気持ち」を前にして、取るに足らない瑣末な問題に貶されたのだ。だから真姫と凛が加入したことも決して唐突な展開ではない。以上の手続きを全て踏むことで、ようやくめでたく、まきりんぱなの3人は、μ'sに加入できたわけだ。

 第4話は、1話のうちに一年組3人を加入させるという物語の要請を、3人の関係性を物理法則に変換し、システマチックに映像を構成することで処理している。花陽はふたりの思いを反射する鏡であり、花陽を引っ張ろうとする力が、結果的に一年組3人の推進力となっていた。いわば花陽はマイナス穂乃果的な存在であり、最終的には物理運動=屋上への移動と、問題の克服=μ'sへの加入までもが、けっきょく一年組3人の運動として成し遂げられた。このシステマチックさは必ずしも作品の評価に繋がるものではないが(安易な役の割り当てはむしろ「つまらなさ」の根拠になりうる)、ここまでガチガチに情報を圧縮した職人芸が見られるのも「ラブライブ!」の魅力のひとつであるし、最後にこのブログの文脈に引き付けて言えば、第4話がこのシステマチックさを実現するために穂乃果を画面から消去しなければならなかった事実が、逆に物語の構成を打ち壊していく穂乃果の主人公性を浮き彫りにするのである。まきりんぱな3人の加入は、穂乃果の営業スキルではなく、穂乃果の不在によってこそ成し遂げられたのだから。

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最後の最後に、組織的な構成に対する作品からの介入がある。花陽がメガネを取ることと、真姫の「メガネ取ったついでに名前で呼んでよ」(意味不明)は、第4話の論理で導くことは困難である(ここは第3話のアバンで、同じ場所で穂乃果に大声で名前を呼ばれたことを受けている。花陽のメガネはこの真姫デレを呼び込むために外されたのだろう)。最後に作者を参照しておくと、脚本の花田十輝によれば、これは京極監督のアイデアだったとのこと(twitter)。

(参考)ラブライブ4話にみる「富野流」演出術 - まっつねのアニメとか作画とか
画面レベルのシステマチックさが堪能できる。

(→)空気を読みすぎた天気「ラブライブ!」第5話
(→)鬼の矢澤の入部試験<アイドルゲーム>「ラブライブ!」第5話
(←)今を愛せ「ラブライブ!」第3話
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