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「ノワール」(BD版)第3話

 言わずと知れたポップコーン回。雨の墓地、女が墓参していた墓はミレイユの右側にある。ミレイユの顔の向きとカメラの動きで表現されてはいるが、ちょっとわかりづらい(違和感を解消させるために俯瞰カットが入る)。要するに、ミレイユはわざわざ墓石と樹木の向こう側を見てしまうほど、あの女に気を取られたというわけ。

 霧香が起き上がり、立ち上がる。いちいち芝居が細かい、と思えるわりに、大胆な引き、散らばった写真の俯瞰、プリンター内部と、トリッキーな画が多い。コンテ演出の川崎逸朗によると(twitter)、MSCグロス回はこの3話とイントッカービレの8・9話、いずれもノワールにしてはアクションの激しい話数のような印象もあるが、実は相当工夫されていたようで。これらの回は作画的にも癖があって面白い。例えば、花屋の霧香の興味なさそうな表情、あるいはメンテ中に思わず銃を構え合う二人の、通じ合っちゃってちょっとびっくりしたその感じ。部屋の左側の姿見は、たぶん置くべきだが、置くんだったら鏡に映ったこちら側も見たい。

 さてこの回はなんといってもアクションシーンである。早くも「salva nos」が流れる中、敵地に侵入するノワール。警戒しながらドアノブに触れる霧香と、既にドアを開けてしまっているミレイユ。案の定ミレイユは敵に見つかってしまい、強烈な照明を当てられる。懐中電灯の照明と画角を合わせた暗闇の表現を味方にして脱出する二人。進入時には無人だったオペレーション室のモニターが点灯し、デュクスが追跡の指揮を執る。ここでノワールはべつに照明を落として回っているわけではないが、監視カメラを破壊する行為がモニター側から捉えられることで、暗闇への転換がノワールの能動的な動きとして描かれる。彼女たちは暗闇に追い詰められたのではない、彼女たちが暗闇を選択したのだ。最終的には、デュクスのほうが「カットしろ」と電源を切ってしまい、真っ暗闇に。ここですかさず「salva nos」のイントロ! 視覚がカットされ、音が聞こえ始める「ちょうだい、ポップコーンをちょうだい」

 1・2話でも書いたように、「canta per me」や「melodie」、「salva nos」といった、作品の鍵になる音楽については、使用範囲を広げながら次第に曲の全貌を明かしていくような音響演出がとられていた。「salva nos」は、第1話では顔見せ程度の使われ方だったが、第2話では1コーラスぶん使われている(クライマックス部分はアカペラ)。そして第3話。まずAパート、侵入失敗シーンで掛かるのはカラオケバージョン。2話アカペラ→3話カラオケ、焦らす焦らす。で、Bパート、本番アクションシーンで、遂に全体が使われる! 画面では、音響演出の存在感と呼応するかのように、視覚をカットされた中での聴覚を頼りにした超人的アクション。ポップコーン、グラス、暗視ゴーグルの起動音と、音響を味方につけて闘う霧香。そして曲のクライマックスは、それに合わせて突撃してきてくれるかのようなデュクス一味を、マシンガンで一気に叩く。連射しまくる霧香の姿は、黒を背景にした3カットで描写されて印象的だが、そう、これこそ暗闇の中で闘っていた霧香の“ほんとうの見え方”ではないか!

 霧香はいまやマズルフラッシュの照明効果をも利用し始めた。蜘蛛女に迫られていたミレイユへの警告は、マシンガンの連射音と、マズルフラッシュの照明。スローモーションで振り向くミレイユの映像で、「salva nos」がフェードアウトし、シーンがカットされる。このシーンのように、映像のバックグラウンドで音楽が鳴っているのではなく、音楽が映像の構成に介入してくるかのような音響演出は、いわゆる真下演出に特徴的なポイントだと思うが、そのような時間を作るための具体的な手順が見て(聴いて)とれる。“映画”と“弾丸”を思い起こさせるポップコーンをばら撒いて、霧香はその映像に参加するかのように闘った。演出と物語展開の噛み合った、傑作回の一つである。

(霧香のマシンガンの連射音は、ダビングで変更されたものらしい(twitter)。アンチリアルな初期バージョンにも興味をそそられる。そっちのほうが……?)

(参考)ぐる式: Noir #03 暗殺遊戯
「初っ端でいろいろな楽曲を小出しにして印象付けておき,続くパートの長流しでダメを押すという手法が共通しているのが見て取れる」。楽曲の使用時間の定量的な記述は、大いに鑑賞の助けになる。
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