高坂プロメテウス穂乃果「ラブライブ!」2期第2話

 2話で早くも合宿回。ラブライブで使える曲は未発表のものに限られると聞き、「なんとかしなきゃ、一体どうすれば……」と漏らす穂乃果。1期1話では、アイドル部設立が一度挫折し、周りの人物が「どうすれば……」と途方に暮れる中で、彼女は突然歌い踊り出すことで作品を起動したのだった。その人物が、「一体どうすれば……」とか言ってしまう世界(画面にすら入らない)。それに対して「作るしかないわね」「合宿よ!」と応えるのは、穂乃果ではなく絵里である。電車に置いて行かれたり、合宿中もだいたい寝ていたりと、地位の変化は明らかに見える。だが穂乃果はただ寝ていたわけではない。

 殺人事件でも起きそうな真姫の別荘。中に入ると、穂乃果はまずこのようにアクションする:「ピアノ! お金持ちの家でよく見るやつ! そして暖炉!!。前ふたつが真姫というキャラクターに結びついているのはすぐわかる。問題は3つめだ。穂乃果は言う、別荘に入った瞬間に、「そして暖炉!!」。続いて、穂乃果「ここに火を……」、真姫「付けないわよ」。ここで冒頭「前回のラブライブ!」の絵里の語りを思いだそう。「穂乃果は出場に積極的じゃなかった。けれど3年生にとって最後の大会になると知って火が付いた。こうしてμ'sはラブライブ優勝に向かってまた走りだすことになった!」。絵里の語りは、〈目標に向かって動き出したこと〉を「火が付いた」と言い換えた。アバンで彼女は、2話における〈向かうべき目標〉を〈合宿による新曲制作〉に確定する。そして本編の穂乃果が暖炉に注意を向けることで、この言い換えを〈火を付ける〉という具体的な動きに落とし込んだ。絢瀬→高坂の見事な連携! 暖炉の火は、新曲制作の動力として、9人の場にともされなければならないのだ。

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穂乃果は火を付けるべき場所を指し示すが、真姫はそれを却下する。火を付けないのだから、スランプに陥るのは必然。/着火を妨げていたのは、「ステキ」「優しいお父さんですね」と言われた、西木野父。サンタから無償のギフトを受け取っているだけでは創造はできない。火を付け、煙突を汚し、ギフトを活かして曲を作れ。

 2話が面白いのは、〈新曲制作に向かうこと〉と〈火を付けるという動作〉を結びつけておきながら、物語の進行と暖炉への着火のタイミングにズレを生じさせていることだ。暖炉には、お仕事3人組のスランプ脱出とは何の関係もないところで、あっさりと火が付いてしまうことになる。やたら尺をとって印象的だった凛・にこの山下り+川転落のギャグシーンの後、シーンが切り替わると、ふたりを暖めるために(真姫には無許可で)暖炉に火が付けられている(もっともらしい心配をする絵里をよそに、「すごい! 本物の暖炉!」と、火にしか興味が無い穂乃果が良い)。ここから物語は、9人を3×3に分ける「ユニット作戦」と、スランプ解消を決定づける決めゼリフ:にこ「曲はいつもどんなときも、全員のためにあるのよ」、穂乃果「誰かが立ち止まれば、誰かが引っ張る。誰かが疲れたら、誰かが背中を押す」、希「一番大切なのは、本人の気持ちよ」へと流れていく。しかし9人をユニットに分ける前から、暖炉には火が付いてしまっていた。

 加えて、〈火が付いた〉ときに、別荘では何が起こっていたか。川転落と暖炉への言及もそこそこに、穂乃果は3人にお茶を届けるために2階へ上がる。そこで彼女が目にするのは、既にもぬけの殻の部屋と、別荘の外でグロッキー状態の3人。カーテンを結んでロープを作る脱出ギミックが、大げさなアクションを思い起こさせる。お仕事3人組は、μ'sの仕事を放棄して逃げ出していたのだ。〈新曲制作に向かうこと〉の動力となるべき〈暖炉の火〉は、メンバー2人が練習中に勝手に山を下って川に落ちたことがきっかけで点火され、同じタイミングで作詞・作曲・作衣装の3人が、仕事を放棄して別荘から脱出していた。ここに共通して見えるのは、大げさなアクション(山下りとカーテン脱出)、9人の場=別荘からの脱出と、自身のなすべきこと(練習と作業)の放棄。〈暖炉の火〉に着目していえば、お仕事3人組がスランプから脱出し、μ'sが曲を創り出す最初の契機となったのは、3人に対する言葉でも、3人をユニットに分けたことでも、ましてや9人の協力でもなく、メンバーが9人の場から逃げ出してμ'sの役割を放棄したことである。

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暖炉に火が付いても、燃える炎を背にして画面に現れたのは穂乃果だけ。他のメンバーがいる場面では、暖炉は遮られる。

 9人の場から逃げ出すこと。練習や仕事を放棄して動きまわること。このことは、一見、メンバー間の心温まる信頼が描かれたかのように見える「ユニット作戦」でも繰り返し現れる。「こんなので本当に作曲できるの!?」と問うにこに対して(にこはいつも本当に良いことを言う)、料理を始めようとする絵里。眠り続ける穂乃果は言うまでもなく、それにつられて眠ってしまうことりと花陽。あるいは、作詞という当初の目的を忘れて登山している海未と、上昇/下降を目まぐるしく体験する凛。そもそも9人は最初から3人ごとに分かれたわけではない。お仕事組のスランプを知った希の提案はみんなで意見出しあって、話しながら曲を作っていけばいいんじゃない?」、にこ「せっかく9人揃ってるんだし、それでいいんじゃない?」。強調される「9人」と「みんな」。だがにこが『にこにーにこちゃん』を持ちだしてきたことで、希が「なーんて9人で話してたら、いつまでたっても決まらないよ」と言い出す。μ'sというグループは、9人が一致団結して同じ目的に向かって進むことができない!

 そして、「ユニット作戦」で、各々が役割を忘れて好き勝手に振る舞うと、面白いことに、メンバーの前に〈火〉が現れてくるのである。まず、にこ・真姫・絵里の作曲班。焚き火というかたちで実際に火がおこされている(「このままだと、火を消したら真っ暗よね」という絵里の言葉は、たんに暗所恐怖症の設定からのみ出たものとは思えなくなってくる)。火が付いているからこそ、にこはそれっぽい決めゼリフをいうことができるし、芋を焼いて真姫に手渡しすることもできる。山の遠景と水音を挟んで、画面は穂乃果・ことり・花陽の衣装班へ。「こんなところに、お風呂があったなんて」と、唐突な入浴シーン(衣装班が全裸)。この風呂はおそらく西木野家の資産ではない。ではなぜ「こんなところ」に「お風呂」があるのか。好き勝手な振る舞いが映像の熱量を上げ、湯を沸かし、風呂を作ったのである。3人が見上げる星空に「きれいだにゃー」と言及する凛、映像は既に作詞班に移動している。視線の先にあるものは、光り輝く恒星。核融合の熱は輝きとなって彼女たちの目に届く。各々のユニットにともった火は、焚き火・風呂・恒星のかたちをとって画面上に現れた。真姫のピアノの音が聞こえる。時は満ちた、今こそその熱量を以って創造せよ。

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もはや火は暖まるためだけのものではない。芋を焼き、湯を沸かし、星を光らせる。作詞班に至っては、星空そのものはもう映されず、それを見ている3人が描かれている。〈火〉は廻りまわってメンバーに戻ってきた。音で緩やかに結ばれたシーンが、曲の完成が近いことを感じさせる。

 結局のところ、にこ・穂乃果・希の決めゼリフは言ってることがバラバラだし、「誰かが立ち止まれば、誰かが引っ張る」と言った穂乃果はやっぱり寝続け、仕事を一切手伝わない。お仕事3人組は、結果的にスランプから脱して曲を作ったが、しかし作業中ほかの6人は寝ていたわけで、この合宿は要するに海未・真姫・ことりが徹夜で作業しただけだ。だが、このグループはそれでもいいのである。目的のために働くのではなく、9人が好き勝手に動きまわること。一箇所に籠り仕事に打ち込むのでなく、役割を放棄してバラバラになること。これこそが、μ'sの創作なのである。彼女たちは一致団結せず、ただ自由に動きまわる。2話の映像は、その瞬間にこそ〈火〉を付けた。曲を作るために必要なのは、ピアノでも辞書でもミシンでもなく、山登りと昼寝と料理であり、焼き芋と風呂と星空なのだ。μ'sの音楽は、この運動のアツさから生まれる。創造的であるためには、目的に縛られず、物語にとらわれず、とにかく動きまわらなければならない。〈火〉を動力にした2話じたいの飛躍が、このことを示しているように見えた。

 ……が、2話のタイトルは「優勝をめざして」なのだった。穂乃果とこの作品は、今のところ「ラブライブ優勝」を掲げ、そこに向かって走ろうとしている。しかしメンバーが本気でそれを共有しているのかどうか(そもそも穂乃果が本当にそんなことを考えているのか)怪しいし、その目標と2話のμ'sの在り方は相容れないようにも見える。目的に向かって進むことは、果たして“輝かしい”ことなのか?

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寝ていても動く。この意地。/寄せ書きフラッグが掲げられるのは、当然、暖炉の上。ここでもメンバーが書いていることはバラバラだが、それがいい。μ'sの赤地が火に見える(かもしれない)。
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