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星空中心的「ラブライブ!」2期第5話

 クライマックスのこの作品らしからぬ緊張のない映像にはショックを受けた。お話は簡単だ。二年組が不在のライブで、いろいろありながらも凛がセンターを務める。はじめは拒否していたものの、最後は特別な衣装を着て舞台の中心に立つ。だがなぜ凛がリーダーなのか、理由は明確には示されない。描かれるのは彼女がリーダーに向いていないことを示すエピソードばかりだ。練習の統率に失敗し、意思決定はできず、衣装のサイズも合っていない。特に衣装は凛をセンターにすべきでない決定的な理由になる。花陽は「μ'sに脇役も中心もないの、グループにいる限りみんな一緒だよ」と力説していたが、それは凛をリーダーにする根拠にはならない(じゃあお前がやれ)。真姫はこの話数で「凛が一番向いている」みたいなことを何度も言うが、軽々しく「一番」とか言い出すヤツが一番信用できない。

 第5話のシナリオの大きな動きとして、二年組が他の6人から完全に引き離されていることがある。この操作によって、凛が穂乃果の代役=リーダーを務めるお話が始まるわけだが、だが穂乃果は完全に不在になってしまったわけではなかった。むしろ二年組はしつこいほど画面上に現れ、遊び続ける。アバンの海とプールの場面の対照が印象づけていたように、二年組と一年組は、映像上では並列的に・対称するように並べられている。修学旅行という要素は、二年組を消して代役リーダーのお話の起点となるだけでなく、両者を並べて描くために引き離して配置するきっかけとして持ち出されている。

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5話は二年組と一年組の対照から始まる。

 お話を振り返ろう。凛は穂乃果が不在だから代役リーダーをやらされている。ここには穂乃果=リーダーという前提がある。しかし、代役リーダーとしての凛がやらされていたことを具体的に見ていくと、少しおかしなことに気がつく。凛がリーダーの名のもとにやらされていたのは、練習の統率・音頭取り、メンバーがモメたときの仲裁と意思決定、特別な衣装を着てステージに立つこと。これ、ぜんぶ穂乃果もやっていない(できない)ことなのである。思い返せば1期6話では、全然リーダー的に振る舞わない穂乃果は、希から「なんで穂乃果ちゃんがリーダーなん?」と突っ込まれていた。そして2期5話では、凛が本来のリーダー的なことをやらされている同じ時、穂乃果は数日後に迫ったμ'sのライブの心配もそこそこに(台風に逸れろと念じるのは「一生に一度きりの高校の修学旅行」が潰されたくないから)、ただひたすら遊び続けている。二年組(穂乃果)を消すのではなく、引き離した上で一年組(凛)と並べることで、穂乃果の代役を務めることと、リーダー的に振る舞うことの不一致が描き出されている。凛はいわゆるリーダーには不適格だが、それは穂乃果も同じことだ。言い替えれば、凛はリーダーに向いていない点で穂乃果に似ていた。皮肉なことに、だからリーダーをやらされる……。

 凛と穂乃果の併置がよく見えるのが、中盤の、屋上での衣装会議のシーン。衣装を拒否する凛を説得する流れの中で、希が「でも実際、衣装は穂乃果ちゃんに合わせて作ってあるから、凛ちゃんだと手直しが必要なんよね」と言い出す。身体的・外面的な要素(これは凛当人もよく主張していた)で凛を穂乃果から離し、センターから遠ざけようとする。希の「この中で穂乃果ちゃんに近いとなると……花陽ちゃん?」のセリフが良い。この説得力のある意見(どう考えても衣装は体形の近いひとが着たほうが良い)に凛が乗る。凛「かよちんかわいいし、センターにぴったりにゃ」花陽「でも……凛ちゃん、いいの?」「いいに決まってるにゃ」「本当に?」「もちろん!」。このやりとりは、すぐに1期6話を思い出させる。書き出してみよう。1期6話、中盤の部室でのリーダー決め会議シーンより、穂乃果「そうだよ海未ちゃん、向いてるかも、リーダー」海未「それでいいのですか?」「え?なんで?」「リーダーの座を奪われようとしているのですよ」「え?それが?」。ほとんど一緒だ。ここで凛は、見た目が穂乃果に似ていないことを指摘されたことで、結果的に逆に穂乃果と近づけられている。このグループのリーダーは、リーダーをやりたいから・リーダーの仕事ができるからリーダーをやるのではない。μ'sのリーダーとは、集団を統率するスキルがある人物のことではないのだ。

 では、μ'sのリーダーとは、一体何をするひとか。穂乃果と凛を比べてみれば、まあなんとなく、危ういからこそみんなで支えてその推進力を発揮させる存在、みたいなものが浮かんでくるが、ここで第5話の気になる要素もう一点、を持ちだしてみよう。この作品においては結構なウェイトを占めている天気という要素は、2期5話では穂乃果の「それろ~」で特に印象に残るところ。沖縄への台風の接近は、二年組が帰れなくなることで、凛をセンターにするお話のトリガーになっている。しかしこの状況設定が導いた動きはそれだけではない。

 結論から言えば、2期5話では、天気は穂乃果が電話をする場所を導く要素としてある。今回、穂乃果は3度電話する。まず1日目、絵里から穂乃果へ、代役リーダー決定の件。次に2日目、また絵里と、代役変更の連絡。最後に2日目の夜、穂乃果から花陽へ、決断を促す電話。最後の電話は、いわゆる「先輩らしいシーン」として記憶に残りやすいところだが、この自分からかけた電話だけは、穂乃果は部屋ではなく、バルコニーからかけている。理由は簡単、外の雨がやんだからだ。前2回は海未とことりと一緒の部屋で絵里の電話を受けていた。外は大雨だった(「イヤミ?」)。だが3回目の電話時には、雨はやみ、頭上には星空が見えている。ここで台風が逸れたのは偶然だが、それによってバルコニーが使えるようになることは必然。さてバルコニーで電話をする穂乃果は、後ろの生徒たちとはガラス戸で隔てられている。風呂あがりの生徒の会話は聞こえない。同じように、穂乃果の通話も建物の中には聞こえないはずだ。穂乃果は花陽との電話にそういう場所を選んだ。つまり穂乃果は、修学旅行中のホテル(出入りとかできなさそう)という、声が聞こえてしまう場所、同級生=海未やことりと強制的に接近させられる空間を嫌ったのだ。穂乃果の「それろ~」は、台風だけでなくメンバーとの接近をも回避し、修学旅行に私的な空間をつくりだす呪文だったのだ。

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1・2回目の電話は部屋の中で受けている。修学旅行・外は雨・狭い部屋という舞台設定が、穂乃果を海未やことりと強制的に接近させている(部屋から出ても、風呂あがりの同級生が歩いているかもしれない)。特にババ抜きは、互いに手が届く範囲にまで近づかなければできないゲームだ。だが外が晴れたことで、ガラスで仕切られたバルコニーという臨時の私的空間ができた。この空間は、穂乃果が一人で行動を起こしたことを強調して見せる。

 天気の変化を活かしたベランダという舞台設定は、この電話が、穂乃果が一人で・能動的に起こした行動であるであることを強調して見せた。μ'sのリーダー=センターはこういうことができるのだ。ここで穂乃果の動きは言葉に変換されて電話の相手に語られる。新たに代役センターになった花陽に対して、「決めるのは花陽ちゃんだよ」。自分の意志で、能動的に決断して行動すべし、バルコニーから掛けているこの電話のように。この「自分で決めろ」発言は作品のテーマめいていて語りやすいが、ここで見逃せないのが電話の相手が凛ではなく花陽だったこと。2期5話のこれまでの流れを見るに、電話の相手は凛がふさわしいようにも思えるが、なぜ花陽だったのか? 凛が自身の意志を以ってその服を着ることができるか否か。それを描くためには、凛に直接「自分で決めろ」とは言ってはいけないのである。なぜか。「自分で決めろ」と言われて自分で決めたのでは、自分で決めたことにならないからだ。

 凛は例の服を着てセンターに立った。しかしアレは自分の意志で決めたことなのか? 開演前、衣装を着たメンバーたちにぐるっと囲まれ、朝から練習して動きを合わせてきたとまで言われる。これでは選択の余地はない。半ば強要と言ってもいい状況だ(1期8話の絵里と似ている)。よって、ここで凛があの衣装を着ること自体は、それほど重い決断が下されているようには見えない。集団の圧力で個人を屈服させる気まずさすら感じる。そんな展開で衣装を着たってあまりグッと来るものではない。この微妙な展開に呼応するように、映像もテキトーな感じで1期4話を引用し、凛が衣装を着る動きや、ステージに見た一本道、そこに踏み出す動き等々を捉えることなく終わってしまう。凛がセンターに立ち、曲が始まるその瞬間、なんと画面は沖縄の二年組に飛ぶ。ライブ当日に遊び呆ける二年組。受信したメールには、「大成功」という事後報告と集合写真。ライブは既に終わった!

 せっかく「女の子らしい」衣装を着たのに、何とも微妙な扱いではないか。センター凛の扱いの微妙さ。ここから最後の展開を導こう。「Love wing bell」のラスト、スカートの練習着を着た凛が屋上の扉を開ける。ここで凛が練習着を変えたこと。これまで見てきた展開はすべてこのシーンに結びつく。この練習着変更は余談ではない。お話を思い返しても、ここの変化に伏線みたいなものはない。2期5話のお話は、代役リーダー=センターとライブ衣装をめぐるものであり、凛が練習着を変えるか否かを悩むお話ではなかった。だからこの変化は唐突に感じられる。そう感じるから重要なのである。お話の筋と関係なく、他の人物の介入もなく、凛が全くもって自主的に・自らの意志で決断を下すこと。このような動きを描くためには、お話に沿った、他の人物との関係の中で起こったものとはぜんぜん関係ない変化を起こさなければならなかった。それが練習着の変更だったのだ。これに比べれば半ば強要による花嫁衣装の着用など霞む。凛が練習着を変えること、この決断を描くために2期5話はあったのだ。

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練習着を変えた凛に真っ先に気がつくのは、ライブをほったらかして遊びほうけ、花嫁衣装の時間を横取りした2年組(右)。左は、那覇空港で衣装を着た凛の写真を見る三人。どちらがより重いものを見ているかは一目瞭然である。目の輝きが違う。

 というわけで、長々と見てきたように、2期5話はいろいろと技巧が凝らされた回に見えた。まず二年組と一年組を離すことで並べ、代役リーダーのお話で凛と穂乃果を接近させた。凛のリーダー不適格性は穂乃果にスライドするが、しかし穂乃果の行動がμ'sのリーダーたる条件を示した。天気の変化を活かしてベランダという場所を用意し、仲間と接近した屋内空間から移動させることで、花陽への電話が、穂乃果が一人で・能動的に起こした行動であることを見せた。さらに電話の相手をずらして、今度は凛が一人で・能動的に「自分で決める」ことができる余地を残した。物語の展開上、花嫁衣装は「着せられた」ようになってしまうから、最後に練習着の変更を用意した。こうして、凛が自ら決断するさまを描き出す。なんとも凝った構成!

 しかし、2期5話の映像は、どうもこの凝った構成についていけていない気がしてもどかしい。凛が衣装を着るシーンは、その動きを捉えようとする緊張感に欠けているし、最もアツい瞬間であるはずの練習着の変更も、わりとアッサリ流されてしまっている。一応、屋上の扉を開ける動きは映るが、いやあれでは弱い! 引用されていた1期4話では、背中を押された花陽が、その後自分の意志で振り返る動きが、緊張感をもって、印象的に捉えられていたのに……。と、残念な気分は尽きないが、とはいえ2期5話の自分の意志で動くことで画面の中心に場を占めるという要素は、2期2話のバラバラ感・4話のにこ(全く私的な事情でセンターに立ちライブする)・6話のみんながセンター・8話の希(一人語りで映像を動かす)にも現れている、作品を通した一つのポイントであるように思う。担当回の主役がセンターを張るのは作品上の強制だが、穂乃果が常に中心にいた1期を思い返してみると、いろんなメンバーが中心に置かれていること自体から感じることはある。
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