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「グラスリップ」第6話

朝方の空。波の音。寝ている女。OP。明けると、その姿勢で寝ていた深水透子がガバっと起きる。OPを挟んだことで、彼女がずいぶん長いあいだそうしていたかのように見える。部屋から出る透子。妹はまだ寝ている。これだけで、その時がふつうまだ寝ているような早い時間であること、透子がその時間よりかなり前から、ずーっと悶々としていたことが感じられる。波の音が変わらず聞こえる。透子がそちらに目をやりながら工房へ向かう。彼女の視線の先には、さっきから波の音を聞かせている海と、明けかかっている空の光がある。だが、何か不自然なくらいジャマなコンテナが、彼女が見ているものをカメラから遮る。彼女がどんな景色を見ているのかはわからない

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海に目をやりながら工房へ向かう透子が良い。コンテナが邪魔だ。/沖倉家からの場面転換で、いきなり惚けた表情の透子。音楽は聞こえ続けているが、彼女が何を見たのかはわからない

・鏡
歯磨き中、「未来の欠片」なるビジョンを見る。キスシーンに叫び声を上げる透子(何せ自分のキスシーンを客観視したのだ、ふつう死にたくなる)。家族が駆けつける。カメラは透子の姿をちょうど真後ろから捉えているため、彼女の表情を見ることができない。家族を捉えたカットでも表情は隠されている。さっきとは逆に、彼女が見たものは見えたが表情は見えない

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この鏡芸をやるために、彼女は歯を磨いている。明け方のぼんやりとした光が、今は光線となって彼女にビジョンを見せる。/後の井美雪哉が鏡の前に立つシーンでは、丁寧にもちょっとカメラをズラして表情を見せてくれる(「どんな顔すればいいんだ」)。見せてくれるから、透子のシーンでは見えなかったことが気になってくる。母の「ごはんですよー」には反応せず、やなぎの「はーい」でビクッとくる芝居が細かい。

・レコード
沖倉家のレコードと、店のBGM。作品世界で鳴っている音が映像の音響にスライドする。作品世界で鳴っているということは、作品世界内の登場人物は全員その音を聞くことができるということ。聴覚は共有されている。その共有を断ち切る、透子―駆の個人回線。前の沖倉家のシーンでは、父には聞こえない超能力として。後のカフェのシーンでは、携帯電話で透子が席を外す。一方は固定電話。このアナログ感が笑える。

・階段
井美=高山家。雪哉の部屋からは、姿は見えなくても、声と足音でやなぎの存在を意識せざるを得ない。ドタドタとうるさい階段はもう一度、雪哉が駆を殴った後にも出てくる。階段を上がる雪哉とそれを追いかけるやなぎ、ちょっと話してまた下りる雪哉。上ったり下りたり忙しい。この動きによって聞こえる足音が、二人の足並みが揃っていないような感じを醸す。

・パンチ
沖倉駆は二度殴られる。一度目は神社の境内で雪哉に、二度目は校庭でやなぎに。まず一発目。フレーム外から雪哉の右が飛んでくる。殴られる直前、駆はちょっと驚いたような表情を見せている。ここで雪哉に殴られるのは、彼にとって意外なことだったのだ。だが二発目、やなぎに殴られるカットでは、敵はフレーム内、彼のど正面に立っている。ここでビンタの予備動作が1コマ打ちでぬるっと入る(演出:守岡博)。殴る瞬間ではなくその前を動かすのが効果的。密度の高い動きが、彼女の殴りの予備動作を強調して見せている。駆もやなぎの動きに気づいたはずだ。だが駆は表情を変えない。彼は殴られることを覚悟している。

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このビンタシーンはいろいろと面白い。カットは構えるやなぎ(正面・駆の目)→驚く透子→ビンタするやなぎ(後ろ)と流れる。間に透子が挟まるから、やなぎが駆をビンタする光景を透子が見ているように見える。だがこの空間の人物配置は事前に俯瞰で示されていて(親切!)、つまりやなぎを真後ろから見たカットは雪哉の視点ということになる。誰が何を見ているのか。こんがらがる緊張感。

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階段が劇場っぽい雰囲気を出している。ややこしいシーンをやる前に、ちゃんと俯瞰を入れてくれる。/最高に面白いシーンなのだが、最終的に透子は目を閉じてしまう。

・目線メキシカンスタンドオフ(1話)
誰が何を見ているのか。同じものを見ているのか。その音は聞こえているのか。視覚と聴覚のズレと緊張……というのが(改めて言うまでもなく)この作品の面白さ。そもそも最初のシーンから花火(音と光のずれを感じる恰好の要素)を使ってきていて、理屈っぽさがちょっと臭いくらいでもあるけれども、それでもやはり1話の最後、喫茶店のシーンはゾクゾク来た。全員が何かを見ているのだが、誰も同じものを見ていないのだ。

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やなぎの目を動かし、目線に注意を向けさせてからの止め絵! 彼らは全員違うものを見ている。盛り上がる音楽と、トドメのセリフ「透子、俺はあの日、君と同じものを見た」

・私を殺して
6話は画コンテ:川面真也、演出:守岡博。ベッドで頭を抱える透子が、ノワール21話の霧香とよく似ていた。
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