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7人のバックダンサー「ラブライブ!」2期第4話

「練習は嘘をつかない」、その練習ににこが来ない。あとを追うが、追いかけっこの末、巻かれる。この追いかけっこ、走っている感じがあまりなく、不満(1期9話と並べて見てみてください)。さておき8人はにこの妹と遭遇。マンションのエントランスという微妙な場所で、にこ=アイドル、μ's=バックダンサーという矢澤家の設定が明らかになる。絵里はキレ気味に電話をかけてにこに説明を求める。真姫も海未も怒っている。ここからお話の中心は、にこが練習に来なかった問題から、矢澤家におけるμ'sの設定の件にすり替わっていく。

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にこが練習に来なかったのは、「保護者の出張中、妹たちの面倒を見なければならない」という正当な理由による。穂乃果は「ちゃんと言ってくれればいいのに」と納得顔で、当初の問題はこれで解決だが、すぐに海未がそれよりどうして私たちがバックダンサーということになっているんですか?」、絵里も「そうね、むしろ問題はそっちよ」と、話をバックダンサーの件に変えてしまう。よほどそのことが気に入らないようだ。/虎太郎に「バックダンサー」と指差されながら「アハハ、こんにちは……」と返すことりが良い。

 さて、「にこ=アイドル、μ's=バックダンサー」の設定を信じているらしき矢澤家に対する8人。花陽「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう」、海未「μ'sの写真や動画を見れば、私たちがバックダンサーでないことぐらい、すぐにわかるはずなのに」。なるほど、μ'sの本当の姿を見れば、「私たち」がバックダンサーではなくアイドルだとわかるはずだ、と。これを受けてことりは、「ねえ、虎太郎くん、お姉ちゃんが歌ってるとことか見たことある?」と尋ねる。虎太郎は「あれー」とポスターを指さす。そこには穂乃果とにこの顔が入れ替えられた合成ポスターが貼られていた。このシーンに注目する。

 このシーンで「合成」されているポスターは、作中で既に「正しい」バージョンが明らかにされている。冒頭の予選結果発表のシーンで、μ'sの公式写真として映されていたものだ。大会サイトに掲載されているくらいだから、この時点の彼女たちにとっては、最もスタンダードな一枚ということになるだろう。にこはそういう写真を改造し、家族に騙っていたわけだ。さてこの写真、メンバーは大げさに「合成」と言ってはいたが、ちゃんと見てみると、穂乃果とにこの顔が入れ替えられているだけで、その他の7人には特に改造はない(絵里と入れ替わっている写真は、髪の処理に少し手間がかかっている。しかし9人が写っているものではない)。実は元の写真からそんなに変わっていない。穂乃果とにこ以外の7人にとっては、海未が言うところの「μ'sの写真」そのままである。虎太郎はそういう写真を見て「にこ=アイドル、他8人=バックダンサー」設定を信じている。このことから次のように展開する。虎太郎は、正しいμ'sの写真を見たら、「穂乃果=アイドル、他8人=バックダンサー」と考えるのではないか? もっと一般的に言ってしまえば、μ'sというグループは、穂乃果がただ一人のアイドルであり、他の8人はバックダンサーのようなものだと認識されうるのではないか? 

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冒頭のシーンで「正解」バージョンをきちんと明かしている。にこ・穂乃果以外の7人に変更はない。/虎太郎はこの写真を見て「にこ=アイドル、μ's=バックダンサー」と考えていた。それなら、「公式」の写真は、「穂乃果=アイドル、他8人=バックダンサー」と受け取れてしまう。というか、この作品って、ここまでそんな感じだったではないか?

 にこの「合成」と虎太郎の言葉は、穂乃果以外の7人に、厳しい現実を突きつけることになった。7人にとっては公式ママの写真でバックダンサー扱いされているのだから事は深刻である。説明を求められたにこは、「私の家で私がどう言おうが、勝手でしょ」と言った。その通り……だが問題は既に矢澤家の内部に留まるものではなくなっている。一般に公開されている写真を見てバックダンサーと言われてしまったのだから、7人は怒る。メンバーたちはこの問題に妙に執着するが、いちメンバーの家庭内設定の問題に執着すること自体が、かえって彼女たちの現実を思わせてしまう。7人にとっては、バックダンサー扱いは、嘘ではなく現実の問題なのだ。にこはポスターを「合成」し、穂乃果と入れ替わって「アイドル」を自称することで、μ'sの現実=1対8の構造を顕在化させてしまった。それがメンバーにバレた。この際どい事態を前にして、本人は説明を拒む。

 この後、にこは屋上のステージで、妹たちに設定の終了を宣言する。「これからは、ここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやっていくの」、すると妹と弟は「でも、みなさんは、アイドルを目指している」「バックダンサー」と、矢澤家設定の認識で返す。これに対して、にこそう思ってた……けど違ったの」。今まで一緒に活動してきた8人を「バックダンサーだと思っていた」と言ってしまうのは、当然引っかかるところ。ここを合成ポスターのシーンと同じように読み替えよう。このときにこが「そう思っていた」と言ったのは、このグループに、メンバーがバックダンサーと認識されうる関係性があること、つまり1対8の構造そのものであり、現実では穂乃果以外が引き立て役になってしまっていたことだ。バックダンサーとは自分のことなのである。「けど違ったの」。しかし、それは違った。「この9人でいられるときが、いちばん輝けるの。ひとりでいるときよりも、ずっと、ずっと」。ここでにこの声には、アイドルの側の声、1対8の「1」の声が重なっている。なぜなら、いま彼女は設定どおり、ファンの前でアイドルとして語っているのだから。「いまの私の夢は、宇宙No.1アイドルにこちゃんとして、宇宙No.1ユニット、μ'sといっしょに、より輝いていくこと」。かくして設定は変更され、現状は塗り替えられる。矢澤にこは、「にこ=アイドル、μ's=バックダンサー」の設定を変更することで、「穂乃果=アイドル、その他=バックダンサー」という、1対8の現実を塗り替えているのである。

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屋上ライブの前のシーンでは、意味ありげな人形配置のモグラ叩きゲームや、虚ろな表情のにこなど、新たな展開を予感させるものが映るが、お話の上では、にこは設定変更を決意して学校に行ったわけではない。屋上ライブは、穂乃果の思いつきで(すごい思いつきだ)、メンバーが勝手に衣装やステージを用意した、突発的な出来事である。/矢澤家でにこが「嘘をついておりました」と謝ったところ。にこは「いやだなあ、みんな怖い顔して」と言っていたが、「みんな」と穂乃果の表情は違う。バックダンサー扱いが現実の問題だった人たちと、そうでない人の顔。

 にこが歌い始める前、8人はダッシュでステージから捌けていく。なぜか? 「にこ=アイドル、8人=バックダンサー」の設定の「最後」であるなら、彼女たちはにこのバックダンサーとして踊り、矢澤家の設定を演じてやるべきだったのではないか? しかしそれでは1対8の構造を塗り替えることができない。あのポスターの雑な合成が示したように、にこの設定は、穂乃果と8人のバックダンサーという現実に乗っかったものでしかなかった。そんな嘘をついている限り、にこの現実はいつまでもバックダンサーのままである。彼女自身がμ'sのアイドルになるために、にこは自ら偽りのスーパーアイドルの座から降り、同時に現実のバックダンサーを消さなければならない。この関係性そのものを上書きしなければならない。8人が退場し、「1」は「1」として歌う。この2つの動きが合わさったとき、1対8の関係は崩れた。2期4話は、にこの嘘を壊すことで、それが依拠していた現実も崩した。彼女は「1」から後退したのではない。7人のバックダンサーたちとともに、9人のアイドルになったのだ。


(余談)矢澤家から追い出されたあと、8人はにこの「家では元からそういうことになってるの」発言の真意を考える。ここで希が「たぶん、元からスーパーアイドルだったってことやろな」以下自説を披露し、真姫が「ありそうな話ね」とコメントする(鋭い!)。希お得意の「ありそうな話」の創作は、2期8話では語り手自身の存在を肥大させ、彼女は自爆することになる。
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